41人が本棚に入れています
本棚に追加
「あたし、先輩の事が好きです」
先輩が目を大きく見開いた。
それから何か言おうと、口を少し開いたのを遮り、あたしは続けた。
「でも、それだけじゃ嫌なんです。あたしが好きなだけじゃ……」
先輩は口を閉じて、またあたしを見つめた。
「だって先輩は、きっとあたしの事、良く知らないでしょ?あたしが今までどうやって育ってきたか。どんな友達がいるか。何が好きで、何が嫌いか。
あたしと付き合った4カ月で、先輩は少しでもあたしの事、分かった?」
「……」
先輩は考え込むような顔をして、あたしから目を逸らした。
「きっと、あんまり分からなかったと思う。先輩といるのは楽しかった。幸せだった。
でも、あたし、先輩の事、ほとんど分からなかったもん……」
それがあたしの、一番の後悔。
「あたしも、先輩の事、ほとんど知ろうとしなかった。一緒に並んで歩くのに精いっぱいだった。そんなんじゃ嫌……」
「紅花ちゃん、そんな事……」
「先輩が今あたしの事をどう思っているのか、あたしには分からない。
けど、あたしの事を知って、あたしの事、本当の意味で好きになってくれたらいいって思う……。だから」
最初のコメントを投稿しよう!