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あれからもう8ヶ月。
季節は夏も秋ももうとっくに通り越して、冬。
朝の町は息が凍るくらいの寒さだ。
「うう、冷た……」
急いで出てきたせいで、うっかり手袋を忘れてきてしまった。
走る度に指先が冷えていく。
けど、あたしの足取りは軽かった。
元陸上部のあたしにとっては、駅までの道のりなんて大した距離じゃない。
鼻歌混じりであたしは駆けていく。
あの小さな箱の中身の事を考えると、わくわくして仕方がなかった。
ただ一つ心配事があるとすれば、それは目の下にクマが出来ていないかという事。
昨日は何だかんだで2時近くまで起きていたのだ。
目の前の歩行者用信号が赤に変わって、あたしはようやく足を止めた。
と、その時だった。
「紅花~!」
後方からあたしを呼ぶ声がして、あたしは振り向いた。
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