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すっかりバテた顔をしてあたしを呼んだ人物。
それはまだ家にいてゆっくり支度しているはずの蒼葉だった。
「紅花。やっと追い付いた……ハイ、忘れ物」
蒼葉はあたしの所まで来ると、息を切らしたまま手を差し出た。
「え、蒼葉……?」
なんで蒼葉がここに?
不思議に思いつつもその手を見ると。
手の中には、リボンが綺麗に巻かれたあの箱。
「それ、ウソ、あたし忘れてた!?」
あたしは慌てて鞄の中に手を突っ込んだ。
「無い……」
そっか。
あの時テーブルに置いたまま忘れてしまったんだ。
「蒼葉、わざわざ届けてくれたの?ありがとう!てか、蒼葉学校逆方向じゃん。間に合うの?」
始業時間まではまだ余裕があると言っても、ここからではいつもよりももっと時間がかかってしまう。
しかも、あたしと違って運動オンチの蒼葉の事だ。
走って追いかけてきたなら、朝から相当疲れてしまうのに……。
蒼葉はやっと息が整ったようで、あたしを見て言った。
「大丈夫。ゆっくり歩いても30分かからないし。それに……」
そう言いかけて、蒼葉は慌てたように話を逸らした。
「てか、早く行きな。遅刻するよ」
ああ。
そういう事ね。
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