「やがて開く華」の蕾

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 ユニフォームは濃い緑色。  胸元にアルファベットでTOUHAKUの文字。  東柏高校、充紀先輩の高校だ。  ピッチ上の選手たちの顔は、ここからではぼんやりとしか見えない。  だけど、充紀先輩の姿は不思議とはっきりとしたシルエットであたしの目に飛び込んできた。  先輩は真ん中よりも少し相手ゴール寄りの所にいた。  先輩が走り出す度に、先輩の茶髪がさらさらとリズミカルに揺れた。  東柏の選手は皆、同じユニフォームを身に纏っている。  なのに、濃緑のユニフォームは、充紀先輩の格好良さを更に際立たせる小道具みたいによく似合っていた。  ……変わってないな。  あたしは目立たないようにクスリと笑った。  髪を染めて、背も少し伸びて、中学校の頃よりも大人っぽくなっている。  それでもあたしは、そんな風に感じた。  相変わらず、充紀先輩は人目を惹き付ける。
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