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「あ、本当だ。充紀~!」
「手振っても気付くかよ」
「うっさいな、私の方見てくれるかも知んないじゃん!」
前の二人の会話にはっとして、あたしは先輩から目を逸らした。
あたしは結局、充紀先輩の試合を見に来ていた。
直前まで、来るか来ないか迷っていた。
けど、せっかく先輩が誘ってくれたんだし、今回だけ。
少し見て、帰るだけなら。
なんて、やっぱり来てしまった。
『六月の最初の日曜日、試合あるんだ。良かったら見に来てよ。俺、高校でもサッカー続けてるんだ。今度の地区大会、メンバーなれそうだから』
充紀先輩は、どうしてあたしを誘ったんだろう。
とっくの昔に別れたあたしの事を、どうして気に掛けるんだろう。
一瞬でも嬉しい展開を期待してしまった自分に気が付き、あたしは急いでピッチの上に目線を戻した。
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