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そのラジオは、前に森の中を散歩している時、お姉ちゃんが見つけたものだった。不法投棄されたゴミの中に一緒に捨てられていたらしい。
この頃は森の中に、ゴミを捨てていく人たちが増えてきた。さすがに雪で覆われた今の時期はいないのだけれど、そういう人たちは大抵、真夜中に来て、粗大ゴミを森の中に捨てていく。
トラックの荷台にたくさんの荷物を縛り付けてやってきて、帰りには空っぽにして帰って行くんだから、全く、嫌になっちゃう。
彼らのせいでどんどん自然が壊れてしまう。しかも夜中に来る彼らは騒音を巻き起こして、寝ているボクたちを何度も起こす。一度、文句を言おうと外に出ようとしたら、
「お前は小さいから、きっと大きなトラックに轢かれてぺっちゃんこになっちゃうのがオチだよ。じっと黙っていなさい。春になったら、引っ越しましょう」とお母さんに宥められたこともある。
いつもだったら、あまり気分のよくない彼らの行為だけれど、たまにゴミの中に宝物があったりするので、ボクは世界は矛盾で出来てるなって改めて実感する。
お姉ちゃんはイヤフォンと、首にぶら下げるストラップがついた携帯型のラジオを発見したのだ。まだ新品に近く、壊れていない。ツマミを合わせるとちゃんと音を受信することもできた。
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