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「…ど、どういう事ゼよ?」
ずきりと眼が痛み、ぐにゃりと、支倉が歪んだ。
「瑞山先生は、いま非常に微妙なお立ち場におることは、おんしにも理解できよう?」
以蔵は痛む目元を抑え、頷いた。
「国許で瑞山先生は蟄居させられ、毎日、厳しかお調べを受けちょる。上士の奴らはな、攘夷の主導を握られた悔しさを…そう煮え湯を飲まされた怨みを晴らそうと、ありとあらゆる手段を講じて、瑞山先生を責め立てちょる言う話じゃ」
語る支倉の顔には、あの嗤いがこびり付いている。
「じゃが、生半なことで瑞山先生を突き崩すなどできん」
全部、国本の許可をもらっちょるんじゃからと、支倉が嘲る。
「じゃからの、奴らが狙ちょるんが、吉田東洋暗殺を筆頭に、邪魔なものを排除し続けた『天誅』。その強引な手口から突き崩す算段にでちょる」
「…そ、それじゃ…わしらの――お役目が…」
そうじゃ、その通りじゃと以蔵を指さす。
「攘夷じゃ天誅じゃと叫んで、我らが行ってきたそれが、今となっては瑞山先生の命運を左右しちょるんじゃ」
と、ここで初めて支倉が困ったようにため息をついた。
「…ど、どれがいかんかったかの?い、井上か?それとも…平野屋は、ちょ、長州とも一緒じゃったし大丈夫じゃろ?…あ…あれか池内大が――――」
「おんし…そういう事では無いがじゃ」
「――――あぁ、あああ、そうじゃ。岡田じゃ!わかばやし…以蔵?いや、あの時の…あの時の…?」
左眼が激しく疼く――。
「しっかりせい」
支倉が嘲笑う。
「い、以蔵はわし…あの、見回り組の男…が、以蔵を――――」
ずきり。
左眼が、心の臓のように鼓動し…痛む。
「大丈夫か――」
支倉が剣に手を掛ける。
「あ、あの男…た、確かわ、わか…若林鉄――――」
傍らに立つおりんが、びくりと身体を固くする。
以蔵が左眼を押さえ苦悶する。
まるで眼球が膨れ上がり、眼窩から零れ落ちそうな恐怖が――ずきずきと痛みが熱く疼く。
「――――わ、わしは…以蔵を斬った…いや…わ、わ、若林を斬って――――」
ぐわっと、以蔵が苦痛に膝を着いた。
おりんが口元を押さえ、青ざめた顔で以蔵を見つめる。
「安心せい。いますぐ楽にしちゃるぞ以蔵…いやさ『骸』よ」
支倉からゆらりと殺気が立ち昇る。
「…な、なにを言うちょる。骸とは…なんじゃぁ!」
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