二章 あいたかったの。

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「で、これからどうするんだ」 「え?」 逢鬼の問い掛けに、かさねはきょとんと首をかしげる。その様子に逢鬼は拍子抜けし、何度目かもわからない溜め息をつく。しかし言葉の意味に気づいたかさねは、途端にあわあわと慌て出すのだった。 「ど、どうしよう…そこまで考えてなかった…」 「捩れ椿の村にでも行くか」 「えっ、でも私……」 逢鬼の提案に、かさねは戸惑う。確かに村に行けば人も居るだろう。しかし、それでどうすることもできない。かさねが今着ているのはこの時代に日本にあるはずのないセーラー服だ。見た目からして不審人物と思われても仕方のないことだろう。それは逢鬼だって分かっているはずだ。かさねは不安げに逢鬼を見る。 「一応、俺は捩れ椿の村にある神社の神に祭り上げられている。村長とも馴染みだから紹介してやってもいいが」 「ほ、本当…!?」 「ああ」 「是非、お願い致します」 かさねは三つ指を地面につき、お辞儀をする。 逢鬼の話は願ってもない提案だった。この時代で逢鬼を除けば知り合いは一人もいないのだ。そんな中で村長に紹介してもらえるなんて、まさに渡りに舟。 「俺がお前を抱えて行った方が早いが、どうする?」 「へ?え、や、そんな出会って間もないのに」 逢鬼の提案に、かさねは初な少女らしい反応をする。今まで何気なしに接していたというのに、触れあうとなれば途端に男性として意識してしまったらしい。微かに頬を紅潮させている。 「…」 「わわっ、ちょっ!」 逢鬼はそんなかさねを荷物かなにかを抱えるように…ではなく、一応かさねを女性としてみているのだろうか、下着が見えないようにとスカートの上から膝裏を支え持ち上げつつ、背中を支える。それはまるで、騎士が姫を抱きかかえている姿によく似ている。 「急ぐぞ」 逢鬼は強く地面を蹴ると高く跳躍し、木々の枝を飛びうつっていく。その度にかさねは悲鳴をあげる。 景色が流れていく。これは確かに、人間の足で駆けるよりもずっと早いだろう。しかしながら、逢鬼が枝に足をのせる度にぎしと軋んだ音をたてるので、かさねは枝が折れるのではと不安でたまらないのだ。 「見えてきたぞ」 「……うわぁ」 家屋がいくつかあり、明かりがついていることで人が住んでいることが窺える。その中でも一際立派な家屋が村の中央にあった。
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