第1章

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「今回の授業では物質の全てにおける力学的状態、同時に 力自体を確認できると仮定した場合、未来予知と呼ばれる そのような事も可能ではないか。という存在追求の話です。 これらが可能な存在を、ラプラスの悪魔と呼んでいます。  つまり自然界の全ての力、同時に宇宙全体のある時点で その状態を観測し把握できた場合、その上でこれらの対象 素材を完璧に解析できる知的な存在が、仮想でなく在ると 必然的に宇宙においては、不確実なものが無くなる為に、 未来であろうとも、完全な状態で予見可能だという事に なってしまうという話です。量子論登場以後の評価は、 この授業では取り扱わないこととします。  さて、お待ちかねの長い講義の後の運命の時間です。」 私: 「教授……自覚してたのか。」 α教授: 「ご覧のとおり本日は、体育館を借りて講義をしており 学生の皆さんは私を中心に、円を描くように囲んでいて この中心に二重の円を正確に描きます。本来決められた 方角に基づいて五芒星を描き、その各直線にはアラム語 曲線にはヘブライ語を鏡文字で書いていきます。  円がダヴィンチの描いたウィトルウィウス的人体図と 同じ位置づけになっているか、確認したら以下の文章を 皆さんアナグラムで、火、水、風、土に相当する語に、 直してください。五芒星の各頂点に立って、私が宇宙を 唱えますので反時計回りに、13回唱えますので、 落ち着いていきましょう。」  教授からはじめて3周した頃から、外周の鏡文字が 宙に浮いてきた。教授は何も気にする必要は無いとして 学生達に笑顔で応えて、そのまま詠唱が続く。徐々に 中心の魔方陣から、てっきり光が出るのかと思ったが ドス黒い、おぞましい腕だの、うめき声だのが渦巻く 煙が立ち昇った。ディレイして山の響きと潮風が吹く。 『吾が名は、Ignoramus Ignorabimus 時に人間どもは ラプラスの名を使いたがる悪魔だ。呼び出したのは どのような決定論的立場で、何を訊ねたいのか。 答えよ。人間ど!ブホ!グォォ!』  瞬間、物凄い速さでα教授は巨大なクリームパイを 思い切り悪魔の顔面に投げつけた。 『ぶほぁ!な、なんじゃ、キサマぁ!』 α教授: 「ご覧のとおり悪魔だろうが、何だろうが避けられない この実験で大事な事は、何か判りますか?皆さん。」 私: 「え、えっと、もしかしたら、あの。……逃げ足?」 α教授: 「正解!ではまた来週の講義で。」
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