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郁人が現れたのはそれから3日ほどしてからだった。
深夜、インターホンでその姿を確認した時には、
幻かと思った。
ドアを開けた瞬間、
抱きしめられた。
あまりの嬉しさと驚きに呼吸をするのさえ忘れてしまった。
何度も名前を呼ばれて我に返った
「……郁人」
「菜々美!」
もう2度とこの手には戻らないんではないかと覚悟した、
郁人の笑顔だった。
「菜々美 菜々美 菜々美!」
子どもみたいに何度も名前を呼ばれて、
まるで子どもみたいに掴まれた両手はぶんぶん振られた。
異常に高いテンションで、
「やっとだ、やっと会えた。
本物の菜々美だ」
いつも冷静な郁人なのに、
本当に郁人なのかと疑いたくなる。
「郁人、郁人ってば……」
「辛い思いいっぱいさせた、ごめん」
「ううん、私こそ、郁人を信じ切れなかった。
ごめん。」
「あの日、いきなり春日と玄関に立っていた
ときは夢かと思ったよ。」
「春日が、郁人は絶対嘘を言えない
はずだから、
会ってちゃんと話をしろって。」
「間が悪いってああいうのいうんだよな」
「でも、あの時行ってよかったって思う。
そうじゃないといつまでもうじうじしてただろうし、
実際二人を見た時はパニクッたけど
ちょっと覚悟とかできたし」
「覚悟ってなんのだよ。」
「ずっと信じて待つ覚悟!」
郁人は、眩しそうな目で私を見つめ、
「会いたかった。」
「わたしも。」
「間に合ったね。」
「え、何が?」
「来週は婚約式だ。」
「あっ!」
そうだそんなのあったんだっけ。
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