第20章 信じていたから

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「まさかと思うけど、忘れてたの?」 「う、忘れてました。」 「ひどいなあ、俺は、  その為にすご~く頑張ってたんだけど。」 「あ、ははは……」 郁人の呆れた視線から目をそらすしかない。 「まあ、菜々美らしいけど、  やっぱ、菜々美のそばには俺がいないとね」 まあ。それは確かだけど…… 「うっかりやで」 ん? 「大胆で」 ? 「思い込みが激しくて」 あれ? 「猪突猛進」 それって? 「佐伯菜々美。  それでこそお前だよな」 「ちょっと、言いすぎでしょ?」 「愛してるよ」 「え、え~と」 「俺は菜々美だけだから、  ずっとだ。  生まれてからずっとだよ、  俺の心は菜々美だけのものだ。 愛してる」 郁人の指が私の顔に伸びてくる。 細くて器用そうな 優しい指がすべるように私の顔をなぞる。 「この頬も、この瞳も、この鼻も、この口も  この耳も、この項も、首筋も……」  
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