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「まさかと思うけど、忘れてたの?」
「う、忘れてました。」
「ひどいなあ、俺は、
その為にすご~く頑張ってたんだけど。」
「あ、ははは……」
郁人の呆れた視線から目をそらすしかない。
「まあ、菜々美らしいけど、
やっぱ、菜々美のそばには俺がいないとね」
まあ。それは確かだけど……
「うっかりやで」
ん?
「大胆で」
?
「思い込みが激しくて」
あれ?
「猪突猛進」
それって?
「佐伯菜々美。
それでこそお前だよな」
「ちょっと、言いすぎでしょ?」
「愛してるよ」
「え、え~と」
「俺は菜々美だけだから、
ずっとだ。
生まれてからずっとだよ、
俺の心は菜々美だけのものだ。
愛してる」
郁人の指が私の顔に伸びてくる。
細くて器用そうな
優しい指がすべるように私の顔をなぞる。
「この頬も、この瞳も、この鼻も、この口も
この耳も、この項も、首筋も……」
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