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「ね、菜々美、部屋行かない?」
郁人が耳元で囁いた。
「残念でしたエステの時間です。」
「ちぇっ、でもいらなくないエステなんて。十分キレイだし。」
するりと背中に手を回す。
「さっき逞しいとか言ってたじゃない。
それに、
明日は誰もが私を見に来るんだから。
世界一キレイにならなきゃ。」
郁人に釣り合う私でいたい。
「それ以上キレイになったら俺の気苦労が増えるだろ。」
「それは、しかたないわね。
郁人は私がいいんでしょ。
これからは、もっときれいになってもっとハラハラさせるわよ。」
郁人に釣り合わないなんて誰にも言わせないから
「あまり先に行くなよ。追い付けなくなる。」
何をいってるのよ郁人。
私のずっと前を歩いているくせに。
郁人の手をするりと抜けてのサロンに向かって歩き出した。
「ちぇっ」
こんな何気ない会話が、
すごく愛しい。
離れて、
お互いが見えなかった時間が、
私たちの絆を強くしてくれた気がする。
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