第20章 信じていたから

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「ね、菜々美、部屋行かない?」 郁人が耳元で囁いた。 「残念でしたエステの時間です。」 「ちぇっ、でもいらなくないエステなんて。十分キレイだし。」 するりと背中に手を回す。 「さっき逞しいとか言ってたじゃない。 それに、  明日は誰もが私を見に来るんだから。  世界一キレイにならなきゃ。」 郁人に釣り合う私でいたい。 「それ以上キレイになったら俺の気苦労が増えるだろ。」 「それは、しかたないわね。  郁人は私がいいんでしょ。  これからは、もっときれいになってもっとハラハラさせるわよ。」 郁人に釣り合わないなんて誰にも言わせないから 「あまり先に行くなよ。追い付けなくなる。」 何をいってるのよ郁人。 私のずっと前を歩いているくせに。 郁人の手をするりと抜けてのサロンに向かって歩き出した。 「ちぇっ」 こんな何気ない会話が、 すごく愛しい。 離れて、 お互いが見えなかった時間が、 私たちの絆を強くしてくれた気がする。
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