3.西空サンセット

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 夕焼け色が、綺麗だと友人は言う。赤い色が美しいと先生は言う。そして、赤い糸が運命だと、人は言う。 「ねえねえ、気になってた彼と、付き合うことになったんだ!」 「うわぁ、よかったね~!」  窓際の席、高校の昼休み。この時間帯のこの場所は、人の話し声がよく聴こえる。誰と誰が付き合って、誰が誰に告白して、誰が誰と別れた。そんなどうでもいい話ばかりが、耳に入って、鬱陶しいったらない。 「にしっち、今日、ひま?」  机に突っ伏していた頭を上げると、クラスの女子が俺の顏をうかがうように覗きこんでいた。 「……なに?」  自分の声が、俺の思考をまどろみの中から、現実へといっきに引き上げる。 「わたしたちと遊ばない? その、人数足りなくてさ」 「……悪いけど、他を当たってくれる?」  用意していた台詞さながらに即答してしまい、心の中で慌てる。ばっさりと言い過ぎただろうか。案の定、話しかけてくれた子はしどろもどろになりながら、俺の席から離れて行った。  ……またやってしまった。寝起きのとろんとした頭だと、まともに考えられずに応答してしまい、相手に不快感を与える。教室で、休み時間にすることがなくて寝ている為、夜眠れない。夜に眠れないから、教室で寝る。この悪循環が、ここ数日ずっと続いている。 「西口、お前またかよ。付き合いわりーな」  隣の席の男子が何か言ったが、俺自身、罪悪感で死にそうなんだ。放っておいてくれ。 「眠たくて。ごめんね」  一応、わびる。名前を呼ぼうとして……言葉が詰まる。 「はいはい、分かってるよ。つか、いい加減俺の名前覚えてくれ」  呆れたような声音。いや、もう。ほんとごめん。心の中で深く謝罪。 「もう何度目だよ」  といいつつ、いつも名乗ってくれる優しいやつだ。今度こそ覚えよう。 「俺は七海だよ、な・な・み!」  あ、そうだ。たしか、女みたいな名前だと思った記憶が……。 「言うなよ。可愛いとか言うなよ。これも何回目の台詞だと思ってんだよ」 「ごめん、ほんとに……」 「寝るな!」
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