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「むぅ……退屈だのぅ」
埃の積もった椅子から飛び降り、持っていた本を、適当に置く。寂れた本屋の片隅で、わたしは一人、やれやれとため息を吐いた。
わたしは座敷童(ざしきわらし)。座敷童の居る家は栄えるが、座敷童が出て行くと急激に衰退すると言われている。まぁ、一種の妖怪のようなものだ。
それが、なぜこんなへんぴな家に居るのか、といわれても大層な理由は無い。ただ、わたしが本好きだからという理由と、あと一つ。ここの店主が本好きで、とても居心地が良かったからというものだ。
だが、それも今日か明日までだ。先代が死んでから店は閉まり、跡を継ぐ者も現れない。なら、いつまでも此処にいる必要はない。誰もいない家ならば、衰退してしまうからという後ろめたさも無い。
その時だった。
「うっわ、埃すごいなぁ。じいちゃん、なんでこんなになるまで掃除しないんだか」
呆れたような声、若く、低い声が入り口の方で聞こえた。先代、孫がいたのか。
「ほう、なるほど。お前、ここの本をうっぱらいにでも来たのか?」
「え、なんか声が……って、うわ! 何この子」
そいつは、不躾にも自分の半分ほどの身長しかないわたしをじろじろ眺めまわしてきた。……先代と同じように、こいつにもわたしが見えるのか。一般的にいないものとされているわたしや仲間たちは、同調する者には見えやすいらしい。簡単に言えば、趣味の合う者ほど見える可能性が高まるということだ。こいつも、先代と同じように相当の本好きなのだろうか……そうは見えないな。
「小さいねぇ」
おい、ちょっと待て。二言目にはそれか。
「失礼な、お前が大きすぎるんだ。ちょっとは縮まんか」
「無理」
そういえば、先代にも小さい、やれ小さいと事あるごとに言われた気がする。
「で、君はどうやって入ったの? 鍵閉まってたハズなんだけど。小さい子供が、こんなとこ勝手に入ってきちゃダメだよ。もし俺が悪いお兄さんだったらどうするの? 連れて行かれちゃうよ?」
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