7.モノクローム・クロック

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 ここまで読んでくださって、ありがとうございます。 今回の作品で、丁度三作目になりますが、『6つの栞』という物語はいかがでしたでしょうか?  一つの世界の出来事を様々な人物の視点から見る。そんな世界観を目指しました。  どの話と、どの話がどのようにつながっているか。それを考えるのも楽しいと思います。今回の目標は『二度読みさせる』ということです。一度読んだだけでは気が付かない事に、気が付くかもしれませんね。ぜひ、読み返してみてください。 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――  そこまで書くと、わたしはパソコンの画面から目を離して、小さく伸びをした。わたしは、小説を書く趣味がある。ちなみに今は、小説サイトの大賞を狙っての投稿作品を書いていた。ちょうど、完結まで書いて、あとがきを少し書いたところだ。締め切りまでは、あと一週間ほどといったところか。 「まだ、少し余裕があるなぁ」  物語の舞台は秋だったが、現実ではもう冬だ。寒い。先日は雪が降ったし、年甲斐も無くはしゃいでしまい、思い出すとかなり恥ずかしかった。  冷凍庫の中には、雪兎がある。毎年、雪が降ると雪兎をつくるのが習慣だ。幼い頃から、近所の幼馴染とよく作っていた。本当に小さい頃は、雪兎に名前をつけて遊んだっけ。もう、よく覚えていないけれど。  わたしは一人きりで、時計屋を営んでいる。この小さな商店街には、ほとんどシャッターだらけだが、こうしてひっそりと頑張っている店だって、ちらほらいる。少し離れたところにある本屋だって、子から孫へと受け継いで、ずいぶん長い間店をやっていると聞いた。 「今日も、お客さんは一人だけだったなぁ」  だが、客足はだんだん減り続けていて、祖母から継いだ店も、そろそろ閉め時と思っていたところだった。 「店、閉めちゃうの?」  ぽつりと呟いたわたしは、ハッとして入り口を見た。小さい男の子が、遠慮がちにドアに隠れて、こちらを伺っていた。
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