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「それは、受け売りか?」
それまで黙っていた座敷ちゃんが、突然口をはさむ。タツキは肩をすくめただけで、何も言わない。
「兎々くん」
名を呼ばれる。落ち着いた口調なのに、急かされたような、そんな錯覚。思わず俯く。
「戯言だから、気にしないで」
悪戯っぽくそう言われた瞬間、反射的に顔が上がった。
「……ありがとう」
ぽつりと、呟くような一言だけれど、あの人には伝わっただろう。そして僕は駆け出した。伝えなきゃいけない人がいる。伝えなきゃならない事がある。
教えてもらわなくちゃ、気が付けなかったけど。僕は寒がりで、泣き虫で、弱虫だけど。それでも、そんな僕でも、やらなくちゃいけない事がある。そう、気づいたから。
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