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第1章 帰郷
海と聞いて連想するのは、紺碧の空と、透明な水の揺らめき。
白い砂浜がどこまでも広がり、穏やかに波が寄せてくる。
だけど・・・
私が思い浮かべる海は、いつも灰色に彩られていた。
荒々しい波が岸を打ち付け、哀しそうに鳴くカモメが空を飛び交う。
まさにいま窓から見えているのは、記憶と寸分たがわない、そんな物悲しい風景だった。
数年ぶりに釧路駅に降り立ち、改札を通る。
小さな土産物屋の横をとおり、バス停に向かう。
出口付近には、相変わらず古本屋があって、思わず足を止める。
まだ、あったんだ。
学生時代に、古本屋めぐりをするのが楽しみの一つだった。
そこに並ぶのは、一昔前の漫画や小説。
だけど、少ないお小遣いでやりくりしなければならない自分には、手の届く宝物だった。
一度書店で奮発して買った新刊。
読み終えて、買取に持ち込んだときには、80円といわれた。
どうして380円の本が80円なのか。
売るといった手前、引っ込みがつかなくなって、そのまま手を離したけれど。
納得がいかないまま、憤慨したのを思い出す。
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