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売らなきゃよかったな。
手元に残った80円を眺めて、後悔した。
もっとも、それがまだ良心的だったことをそのときの私は知らない。
それは発売されてすぐの新刊だったから、その価格だったけれど。
1年も過ぎたものは、10円程度にしかならないことをさらに後で思い知る。
まったく、利益率はどれだけよ?
呆れたようなため息をつきながら、100円コーナーを見るともなしに眺めて、外に出た。
バスを待つ間、携帯をかばんから出して、着信を確認する。
同じ名前が並んだ履歴を一瞥して、目を閉じる。
そして、相手の登録を消去した。
ボタンひとつで断ち切れるとは思わないが。
儀式的に必要なものだったのかもしれない。
携帯みたいに、記憶ごと全部消去できたらいいのに。
やってきたバスに乗り込み、心地よい振動に揺られる。
―――――― 帰ってきたんだな。
今にも雨が降ってきそうな曇り空と、同じ色をした川を見つめながら、これからのことを考えていた。
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