第1章

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村田は警察には「口裂け女」という単語を岡田が言っていたと話したらしいが、今の段階ではそれが何を意味しているのかまでは皆無である、ということだ。 岡田は外傷もなく、ただ死んでいた、ということまでしか村田からは聞いていないが、詳しい状況を学校側から何か説明があるかもしれない、と乗り気ではないがオレは学校へ行くことにした。 何かわかるだろうか。 昨日のようなすがすがしい太陽の光が照り付ける中、久しぶりの通学路を歩いた。学生服を着ていろんな方向へ学生が足を進める中、オレもその集団に身をひそめていた。とにかく夏休み明けということもあり、みんな何か明るそうだった。新しい学期が始まる。それだけで言いようのない期待感が顕著になるのだろう。 ただ、クラスメイトが死んだ、という一報から始まるであろう新学期のことを考えると、とにかく気が滅入った。先が暗い。このまま卒業する半年間、ただただ暗い学校生活になると覚悟しなければならないだろう。そう考えながらバス停まで足を進める。 学校へ着くと、やはり生徒の群れがところどころ集団を作り、話し込んでいる様子が見られた。こんな光景は普段見なかったので、やっぱり岡田の死が関係しているのだろうと思った。学校の人間が1人死ぬだけで、こんなふうに噂が広まるのが早いのだと少し怖くなる。 教室の前まで来ると、立ち入り禁止になっていた。警察が数人、教室の前で通行止めをしていた。よくテレビの刑事ドラマで見るような例の関係者以外立ち入りを禁止するロープが教室を取り囲んでいる。窓もすべて締め切られ、入口のドアからは警察がせわしなく行き来している様子だった。教室の中までは今いる距離からは見えない。教室の前には教頭先生がこの3年1組の生徒に対して「1組の生徒は視聴覚室に行ってください」と呼びかけていた。もう当分はこの教室に入ることはできないみたいだ。後ろに向きをかえ、2階にある視聴覚室まで移動しようと歩こうとしたとき、村田が目の前から歩いてきた。数メートルの距離になり、村田がオレの存在に気づく。目を合わせると、真剣なまなざしに目が力強くなった。村田は教室に視線を移すと、状況を把握し、オレと視聴覚室へ向かうことにした。
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