第1章

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家に着くと、ドアには鍵がかかっていた。鍵を持ってなかったので、ドアをノックした。予想通りインターホンから声が聞えてきた。 「どちらさまですか?」 「オレ。」 ドアが開いた。靴を脱ぎ中に入ると、半開きのドアの向こう側のリビングあたりから母親がオレに言う。 「外に出るときは鍵を持っていきなさいって言ったでしょ?いちいちドア開けるの面倒くさい」 ああ、とドアの向こう側まで聞えるような声で言うと、自室までの階段を上った。 自分の部屋だが、母親含め兄、父親も自由に出入りできるようにドアには鍵はしていなかった。この家のルールで、何か万が一の時を考え、自室には鍵を掛けないこと、というルールが長年続いていた。兄の部屋も、両親の部屋もだ。 開け放しのドアを通り越し、中に入る。自分の机にのイスに座る。それにしてもほぼ1か月半ぶりだろうか、家族以外の人としゃべったのは。それに夏休みで初めて人と会い、遊んだ。それだけでもう何か満足感を得ていた。何もしない夏休みだが、たかがそんなちょっとした遊びでも夏休みをもう十分楽しんだんじゃないかくらいの勢いの感情が体をかけめぐる感覚だった。オレには友達がいないわけじゃない。ただ、オレが家から出なかっただけだ。
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