第1章

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目覚めた。 といっても、机の上に置かれていたスマホを手に取り、時間を見る限り、2時間ほどしか寝てない。浅い眠りだった。寝れるはずもなかった。クラスの人が死んだというのに。 今まで誰かが死ぬことはあった。たとえばおじいちゃんは3年前に死んだ。10年前くらいには、オレが小学生のときに飼っていたネコが死んだ。だが、今回の死、岡田の死はオレにとって今まで一番死というものを深く胸に突き刺さるような、現実味のある死であった。同年代はおろか、知っている人で死者が出たことなんてないからだ。 学校へ行くのも、もう面倒だった。どうせ大学なんて推薦で受かる・・・勉強する意味などもはや今のオレにはない。ただ、岡田が死んだということだけ のために学校へ行くというのも、気が引けた。オレが学校へ行ったところで、何も変わらないし、村田とクラスの連中と顔を合わせ岡田について話し込んだところで、何も意味もないとわかっていた。 だが、学校へは行くべきだと思えた。まだ電話越しでの村田からの一報に過ぎないし、詳しい死因など、学校側、先生側から説明があるだろう。いや、違うか?生徒が1人死んだところで、学校はちゃんと説明するだろうか・・・?詳しい説明なんてしたところで、むしろ親側から何かいろいろと面倒な物言いなどをされても困ると弁明は避けるか?・・・ありえる。 岡田は学校で死んだからだ。 村田の電話によると、岡田はオレが帰ったあと、村田と一緒に帰ることになったのだ。先に家に帰ったのは家が近 かった村田。村田と別れ際に、岡田が「学校へ行かなくてはならない」と言い、学校へ行ったらしい。なぜ学校へ行く必要があるのかまでは聞かなかった。 それから数時間後、岡田から村田に電話がかかってきた。岡田は息が荒く、少し疲れ切っているような様子が電話口から受け取れたらしい。どうしたんだと村田が聞くと、岡田は「口裂け女について何か知らないか?」と言った。 村田は何言ってるんだ、と相手にせず電話を途中で切り、しばらくして岡田が自分のクラスの教室で死んでいるところを教職員が発見し、警察が学校へ駆けつけた。携帯電話の履歴で、最後に電話をかけていたのが、それも死ぬ間際ということもあり、村田に事情を聴くべく村田の家に警察が来たらしい。 そしてオレに電話をかけてきた。もちろんオレは何も岡田が死ぬ理由も知らない。
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