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鍛冶屋の話に、不信を抱いていた猟師も、納得して大きくうなずいた。
「しかし、バートリ神父様は何故、シャナンなんかを嫁にするんだ」
「神父様はお優しいから、あの娘を不憫に思ったんだろうさ」
「そうだなあ。エッカルトザウ伯爵夫人は酷い仕打ちをしたっていうじゃないか」
「あの娘に罪はなかろうに」
「今でこそ、城への出入りも許されたが、男爵の養女なのに伯爵夫人が口出しして、質素な服しか着させてもらえないそうだ。あの気弱な男爵は、伯爵夫人の言いなりだもんなあ」
「それにしても、あの娘、日増しに綺麗になると思わないか? 着飾らなくても、なんというか、鈴蘭のような、俗世離れしている可憐さが……」
「柄にもないことを口にするな。お前、見たことがあるのか?」
猟師は、鍛冶屋の樽のような腹を小突いた。
「教会で、ちょっとな。まあ、エッカルトザウ伯爵夫人の娘より、遥かに美人だね」
「エッカルトザウ伯爵んとこの娘は母親譲りのちっこい目に、鼻が低いっていうからなあ」
「自分の娘より愛人の娘のほうが綺麗じゃ、伯爵夫人も面白くないんだろう」
「そうだなあ、伯爵の娘と比べりゃ、うちの娘のほうがよっぽど器量良しだね」
「お前んとこのが? 吸血鬼だって敬遠するね」
「お前の娘よりは美人だ!」
「あんた達、もう店じまいだよ。早く帰りな」
店の女主人が目の前のテーブルの上を片付けながら二人に声をかけた。
「おい、この雪が止むまで、もう少しいいだろう? しょっちゅう来てやってるんだから。あっちの隅っこにいる客はまだいてもいいのか?」
「なに寝ぼけているんだい。酔いが回って幽霊でも見たのかい。ずいぶん前からあんた達の他に誰もいないよ」
「そんなはずはないぞ。あそこの席に若い旅人が一人いたじゃないか」
「もう、ごちゃごちゃ言わないでとっとと帰っておくれ!」
「おっかしいなあ」
二人は雪の降りしきる青白い闇夜に放り出されて寒さで一気に酔いが醒め、首をかしげたのだが、思いつく答えもなく、寒さに肩を丸めてとぼとぼと歩いていった。
「シャナンの夫となる男が、まさか神父とは」
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