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「それ以上近づいたら・・・・分かるよなぁ?」
多分、今の私は恐怖に飲まれた顔をしているだろう。死にたくない。そんな感情が揺れ動く。すると、少年が初めて口を開いた。
「やれよ」
瞬間、その場は凍りついた。今、彼は何と言ったのだ?
「はぁ?なんだ、もしかしてキチガイな俺カッケー君か?」
小太りの男は今のに対し、何か察したようだ。笑いながら、煽り始める。それに呼応するかのように少年はコートの下に隠れていた何かを取り出す。
「ああ?何だそれ?」
少年は記憶に無いが多分、武器であろうものを取り出した。それは暗い夜の中でもはっきりと形が見えるほど黒く、冷たそうな一枚刃の剣だった。あの形はどこかで見たことがある気もするのだが、思い出すことが出来ない。
「そうだな。冥土の土産に教えてやろう。」
「ああ?」
少年はニヤリと笑う。
「これは刀という、日本古来の武器だ。そして、」
そう言葉を発しながら、彼はカタナを右手で持ちながら、地に水平に構える。
そして、次の瞬間。
「ギョッ!!!」
「俺は罪を斬る者だ。」
私の横に短い旋風が吹き、小さい悲鳴が聞こえる。そして、目の前に少年の顔があった。しかし、彼の冷たい眼は私を見ていない。ただ、情の欠片も無い目は罪のみを見ているのだ。
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