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会長もグラスに掛けていた手を降ろし…
渉さんを見つめた。
言葉がなくても
そのミートスパゲティーに
何か特別なものが込められていることは私にもわかった。
渉さんはそのお皿を見つめながら
私に説明するように遠い声で囁くように言った。
「ガキの頃から…毎年、これ。クリスマスにツリーもプレゼントもなかった俺に…サワさんが毎年…」
目頭が熱くなり、瞳を涙の膜が覆う。
そして、次の会長の言葉でその涙が粒になって零れ落ちた。
「…生前…渉の母親に聞いていたんだよ。毎年クリスマスにはミートソースのスパゲティーだって。渉の好物だからって…」
佐和子さんはエプロンで涙を拭いた。
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