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渉さんは例の新工場の独立と建設に向けて奔走し、帰宅するのは毎晩遅かった。
けれど、代わりに佐和子さんや会長が私を今まで以上に気遣ってくれていた。
まるで、渉さんの分を補(オギナ)おうとするかのように。
だけど、本当は…そんな必要はないの。
私はいつだって渉さんの優しさを十分に感じていたから。
金曜の夜。
渉さんの帰りはいつもよりもさらに遅かった。
渉さんのベッド。
そっと布団を捲(マク)り、渉さんは先に横になっていた私のカラダに疲れたカラダを密着させてきた。
私はそれに小さく反応する。
「…おかえりなさい」
「…起こしたか?」
「…ううん。渉さんと一緒の方が…よく眠れるから」
私は渉さんのカラダに擦り寄った。
一人でいると、
渉さんのことが心配だったり…
淋しかったり…
深い眠りにはなかなか就けなかった。
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