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それでも僕は手を緩める事が出来ない。
それでも胡桃が好きなんだ…。
諦められない…。
「千秋は夏くんと胡桃のDVDの存在を知ってる?」
道連れにしようと思った。
どうせ同じ穴の狢だ。
千秋を僕と同じ穴ぐらに落としてしまおうって思った。
「…ああ、そんなもんただのAVだろ?
春陽はそれ観てもう抜いたのか?」
だけど千秋はそんな僕なんかまるで眼中ないように、
まるで夏くんと胡桃の事なんか何とも思ってないようなアッサリとした態度だった。
「…何で?何で千秋は平気なんだよ!?」
「そんなものは過去の産物にしか過ぎねー。
それにいつまでも引き摺ってたって仕方ねーし。
現に俺らだって現在進行形だろ?
それ自体割り切らなきゃやってらんねーよ。」
スルリと僕の手が千秋から離れていった。
もう強気でなんかいられない。
「…胡桃が観ろって言うんだ。
観たら僕との未来を考えてくれるって…。」
「ハッ、アイツらしいな。
ちんちくりんのくせにドS満載だな!」
千秋はそう言ってハハッと声を立てて笑った。
何が可笑しいのか知らないけど、
僕にはそんな千秋が堪らなく羨ましかった。
そして堪らなく悔しい気持ちになった。
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