【25】はるひのセンタク

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「…まあ観る観ないは別にして、 決めるのは胡桃だ。 それに春陽にだって選択肢はある。」 僕は黙って千秋の言葉に耳を傾けていた。 「辛いなら観なきゃいい。 それでもって胡桃を振り向かせてみせろよ。 それでこそおまえだろ?」 「…何で?」 「ん?ああ、俺だって少しの罪悪感はあるさ。 おまえの居ねー隙に卑怯な真似をしたからな…。」 千秋…、 僕は改めて最近の千秋をマジマジと見た。 人を舐め腐った態度は相変わらずだけど、 でもやっぱり前とどこか雰囲気が違う。 「…前は他人なんか関係ないって顔してたくせに、 変われば変わるもんなんだな…。 何か千秋大人になった…?」 「はあ?」 「それってきっと胡桃のお陰なんだろうな…。」 何となくだけど無性に笑いたい気分になった僕は、千秋のその真面目腐った顔を見ながらクスッと笑った。 僕の選択肢…か。 もしそれが許されるなら、 それだったら僕は自分のペースを崩さない。 それに胡桃に愛される努力はこれからも続けていく。 だけどあのDVDだけはリタイアだ。 僕には到底無理だ。 「…千秋も観る? あの二人のDVD250枚もあるんだけど?」 僕は冗談ぽい視線を千秋に送る。 すると千秋はなぜか両手を上げてギブアップ姿勢。 「遠慮しとく…。」 その千秋の態度があまりにもさっきと違い過ぎて、 それがバカみたいに可笑しくて、 僕はついついアハハと声を出して笑ってしまった。 .
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