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そして千秋と僕の攻防にも決着が付いたのは胡桃の出産後すぐの事。
僕と千秋は夏くんのお母さん、
いや、今は胡桃のお母さんからの連絡によって産気付いた胡桃の元へと駆け付けた。
しかも千秋もなぜかその日に限って仕事を抜けられたようで、僕の一人勝ちというわけにはいかなかった。
「ちょっとお母さんっ!!
何で二人を呼んだのっ!?」
陣痛でイライラしている胡桃は迫力がある。
「良いじゃないの!
どちらかがこの子のお父さんに成るんだから!」
でも胡桃のお母さんも負けてない。
「もう勝手に決めな、、、痛っ!!
痛たたたた……、」
痛みに顔を歪める胡桃に僕はタジタジ。
こんな時の男は本当に役に立たない。
「ったく、何変顔カマしてんだよ!
シャキッとしてサッサと産んでこい!!」
千秋はなぜか顔を壁に向けて胡桃に喝を入れている。
それを見た途端可笑しくて、僕は一人でフハッと吹き出した。
千秋だってやっぱり怖いんだ。
「もっ、もうっ勝手な事ばっかりっ!!」
そして分娩室に移動する胡桃に向かって僕らは同時に叫ぶ。
「「胡桃っ!!」」
「僕と結婚して下さいっ!!」
「俺と結婚してくれっ!!」
その声に振り返った胡桃は切な気に瞳を揺らして、
だけど何も言わずに分娩室へと消えていった。
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