【26】くるみのオトコ

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「平原 千夏ちゃーん、 どうぞー、 3番診察室にお入り下さーい!」 「はーい! ほら、千夏行くよー。」 私は嫌がる千夏の腕を引っ張った。 「いや! チナおくちゅりキライ!」 「ダメだよ。 今日は千夏の大好きな人が来るんだから! コホンコホンお咳をしてる子には会わせてあげないよ?」 「やあだー!!」 「じゃあ良い子だから言う事聞いて、ね?」 千夏は頬をプクーッと膨らませて不貞腐れている。 だけど仕方なしか嫌々コクンと頷くと、私はようやくこの駄々っ娘を連れて診察室に入る事ができた。 あーんと口を大きく開けている千夏を見ながら私は3年前の事を思い出していた。 ここと同じような古びた病院で、私は二人の男性にプロポーズをされた。 だけど私は生まれてきた子が女の子だった事に驚き、そんなものはとうに頭から消えていた。 ずっと男の子だと思い込んでいた私は、 頑なというか頑固というか…、最後まで医者からの話を聞かずに出産に臨んでいた。 私にそっくりな女の子。 夏にはちっとも似てないような気がする。 それでも嬉しい。 心の底から嬉しい。 夏は私にそっくりな女の子が欲しいと言っていたから…。 夏が生きていたらきっとこの子を溺愛するに決まってる。 そして私はそんな事を想像するだけで幸せになり、千夏を見れば自然と笑みが溢れてしまうのだ。 .
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