【26】くるみのオトコ

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診察が終わると私たちは1時間に一本だけのバスに乗って家に帰る。 長野の一面草だらけの牧場に。 風邪をこじらせたら困ると思って千夏に暖かい格好をさせれば、今日はポカポカ陽気の過ごしやすい天候だった。 若干汗を掻いている千夏の上着を脱がし、 私は自分の膝へと千夏を倒した。 まだまだこの子は小さい。 バスの揺れが心地良いのか、行きも帰りもぐっすり眠っている。 私は少しだけ解放された子育てからホウッと息を吐いて、 ガタガタと揺れる視界の先には木々が生い茂っていた。 癒される…。 眠っている我が子に見渡す限りの緑。 子供が生まれたらこの場所に戻って来ようと決めていた。 夏と私が育った緑の楽園。 この子を伸び伸び育てよう。 ずっと前からそう決めていた。 「よっこらしょっと!!」 停留所でバスから降りると、私は千夏を背負って牧場までの道程を歩く。 3歳といえども寝ている子供を背負って舗装されてない道を歩くのは結構しんどい。 私は息も絶え絶え牧場の入り口まで辿り着くと、ひとまず休憩とばかりに千夏を背負ったまま柵に寄り掛かった。 すると、 「はるるーっ!!」 なぜか背中から寝ている筈の千夏の声。 .
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