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「おーい、千夏ーっ!!胡桃ーっ!!」
そして牧場の内側から大きく手を振る春陽。
私と千夏はそれに応えるように大きく手を振り返した。
「ママおんりおんり!
チナ、はるるんとこ行くー!!」
千夏は私の背中でバタバタと手足を揺らして暴れ始め、私は屈んでその駄々っ娘を降ろしにかかる。
だけど千夏は即座にジャンプで着地し、急いで春陽の元へと駆けていった。
その姿に私は苦笑い。
どう考えてもこの子は夏の性格には程遠い。
アイツと私の子だわ…。
フフッと笑みが溢れてしまうのはなぜだろう…。
私はその思考を一旦ストップさせて、それから千夏と春陽の元へと向かった。
春陽はというと千夏に付き合ってハヤテに草を千切って食べさせていた。
そしてこの牧場にはもうハクの姿はない。
私が千夏を連れてここに戻った年に、ハクは天国へと旅立っていった。
ハクと私は25年来の付き合いだった。
「ゴメンね…、忙しいのにわざわざ来てもらっちゃって。
また千夏が我が儘言ったんでしょ?」
私は春陽の横に並んだ。
「アハッ、まあそれもあるけどさ、
僕も千夏に会いたかったし。」
そう言って春陽は千夏の頭を愛しそうに撫でた。
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