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「さーてと、そろそろ寝よっかなー。」
春陽はうーんと伸びをしてから靴を履いた。
縁側から歩き出した春陽に私は「おやすみ」と声をかけ、
春陽はそれに足を止めてクルリと振り返る。
「次来る時はおもちゃのピアノを持ってくるよ。
千夏にピアノを教えていい?」
「フフッ、先生よろしくお願いします!」
私の声と共に春陽は手を振ると、そのまま前を向いて母屋へと歩いて行った。
そして翌日になって私たちが起きた頃にはすでに春陽の姿はなく、早朝急いで帰ったのだとお母さんから聞かされた。
するとそれに剥れている小童が一人。
この怒りようだと父親が今日にでも帰って来てくれないと大変だ。
口を尖らせて大の字で寝転んでいる千夏を見つつ、
私は昨日のアイツとの電話の内容を思い出していた。
『悪りー。
今日帰れなくなった。
千夏には帰ってから俺が謝るから。
じゃあな、明日には帰るから。』
たったこれだけだった。
それにこの電話で私は一言しか喋ってない。
『はい。』
開口一番のこれだけ。
だったらメールでいいじゃん!
それとも打つ事すら面倒ってか!
ピキッと青筋が浮かんでくるのを抑えながら、私は千夏のご機嫌取りを開始する。
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