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「うわ、おまえ不意打ち!」
この強がりも彼の可愛いところ。
たかが触れるくらいのキスに、たかが名前を呼んだだけでこんなにも落ち着きをなくし、
私の前での千秋はとても初々しい。
「もっとする?」
と、首に腕を回せば、
「する!」
と言って素直なところもまた可愛い。
「口開けて…、」
「…んっ…、」
草の上で寝転んでキスに勤しむ私たちは、会えなかった日々を埋めるようにして触れ合う。
だけど、
「この手は何?」
私は自分の胸を掴んで離そうとしない千秋の手をどうにか剥がそうと試みる。
「いーじゃん!
誰もいねーし会えなかった分の俺を受け止めろ!」
「バ、バカーッ!!
こんな真昼間にしかも外でだなんて絶対やだっ!!」
私の服をグイッと持ち上げて発情する千秋をどうにか押し返す。
「夏芽とは外でしてたくせに差別すんな!」
「それとこれとは別なの!
私もいい歳なんだからねっ!」
「うっわ、やっぱしてたんじゃん!」
今更ながらに私はカマをかけられた事に気付く。
「…昔の事だから、エヘッ。」
と、どうにか笑って誤魔化せば、
「夏芽ーーーーーーっ!!!
羨ましいぞこらーーーっ!!」
この緑豊かな青空の下で、千秋の声が高らかに響き渡った。
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