【26】くるみのオトコ

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「ちょっと変なとこ触らないでよ。」 「いちいちうるせーなー。 落ちたくなかったら大人しくしてろ!」 私と千秋はハヤテの二人乗りで家までの道程を急ぐ。 手綱は千秋が握り、私が前で千秋が後ろに跨っている。 「二人乗りなんて高校以来だね…。」 私は昔を懐かしみながら染み染み口にすれば、 「ああ、まさか自分が手綱を握る日が来るとは思わなかったぜ。」 と、なぜか千秋は満足気。 「フフッ、そうだね。 私もまさか千秋とこの長野で馬に乗るとは思わなかったなー。 あの頃の私に会えたら教えてあげたい。 『千秋に捕まった』って。」 「はあ? 人聞きの悪い事言ってんな! 昔はともかく今は俺に惚れてるくせして!」 ハッと千秋は鼻で笑う。 私はそんな千秋が可笑しくて、アハッと一人で吹き出してしまった。 グラグラとハヤテに揺られながら千秋が私の腰に腕を回せば、私はハヤテのタテガミを掴む。 あの時とは真逆のシチュエーションにドキドキする。 変わったのは千秋? それとも私? こんな未来が待ってるなんて想像もしなかった。 こんな風に誰かに寄り添う自分が夢みたい。 「千夏怒ってっかなー?」 「さあ? 頑張らないと春陽にパパの座取られちゃうかもよ?」 「マジか!…ヤッベー。」 .
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