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「ちょっと変なとこ触らないでよ。」
「いちいちうるせーなー。
落ちたくなかったら大人しくしてろ!」
私と千秋はハヤテの二人乗りで家までの道程を急ぐ。
手綱は千秋が握り、私が前で千秋が後ろに跨っている。
「二人乗りなんて高校以来だね…。」
私は昔を懐かしみながら染み染み口にすれば、
「ああ、まさか自分が手綱を握る日が来るとは思わなかったぜ。」
と、なぜか千秋は満足気。
「フフッ、そうだね。
私もまさか千秋とこの長野で馬に乗るとは思わなかったなー。
あの頃の私に会えたら教えてあげたい。
『千秋に捕まった』って。」
「はあ?
人聞きの悪い事言ってんな!
昔はともかく今は俺に惚れてるくせして!」
ハッと千秋は鼻で笑う。
私はそんな千秋が可笑しくて、アハッと一人で吹き出してしまった。
グラグラとハヤテに揺られながら千秋が私の腰に腕を回せば、私はハヤテのタテガミを掴む。
あの時とは真逆のシチュエーションにドキドキする。
変わったのは千秋?
それとも私?
こんな未来が待ってるなんて想像もしなかった。
こんな風に誰かに寄り添う自分が夢みたい。
「千夏怒ってっかなー?」
「さあ?
頑張らないと春陽にパパの座取られちゃうかもよ?」
「マジか!…ヤッベー。」
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