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未婚の私の場合、分娩室で赤ちゃんに会えるのは家族であるお母さんだけ。
お母さんは赤ちゃんを見るなり『あらま!』と声を上げ、服の買い直しだとか何やら一人でブツブツ言っていた。
それから場所を部屋へと移動すると、待ってましたとばかりに二人の姿が見えた。
『胡桃おめでとう!可愛い女の子だったね!』
『おまえにしちゃよく頑張ったじゃん!』
と、同時に声をかけられて、
出産で力を使い果たした私は『ありがと』と一言で纏めた。
ベッドで横になりながら一息付いていると、なぜか二人はソワソワと私を見ている。
私は意味がわからず二人を見上げると、
春陽が待ち切れずに言葉にした。
『疲れてるとこ悪いんだけど…、
さっきの返事、今聞かせてもらっていい?』
『何の返事?』
私はキョトンとしていた。
だって頭が回ってなかった。
『ハッ、ハハッ!
胡桃の奴もう忘れてやんの!
こうなりゃもう一度言わなきゃな!』
『僕から言う!』
目の前での二人のやり取りを眺めつつ、徐々に私の頭も冴えてきた。
ハッと思い出した時にはすでに春陽が私の手を取って跪いていた。
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