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『胡桃…、僕と家族になろう。
きっと君を幸せにすると誓う。
僕を世界一幸せな夫に…、そして父親にさせて…。
だから僕と結婚してください。』
春陽は真剣そのものだった。
私から目を逸らさず真っ直ぐ真っ直ぐ伝えてくる。
子供の父親になろうとその想いで溢れていた。
何て愛だろう…。
こんなに深く愛されて、私は春陽となら暖かな愛に包まれた日々を送れるだろう…。
だけどゴメン…、春陽ゴメン…。
違うの…。
私の求める未来はそれじゃない。
きっと誰も理解できない。
それがずっと胸の奥に燻っていた。
誰も私を理解できないと…。
春陽はそうっと私の手の甲にキスをして、ゆっくりと立ち上がる。
するとバトンタッチとばかりに今度はナツが私の手を取った。
だけどナツは私の手を強く握るだけで何も言わない。
ビー玉のような瞳を瞬かせて、ただ私を見つめているだけだ。
柔らかな瞳力。
そしてフッと不意に頬を緩めたかと思ったら、いきなりガバッと私に頭を下げた。
『本郷の名は捨てる!!
だから俺を平原家に入れてくれっ!!』
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