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『…え…?』
私はナツの言葉の意味を深く読み取ろうとした。
本郷の名を捨てる…?
それってどういう意味?
もしかしてナツは私がこの平原の姓にしがみ付いてる事に気付いてる?
ナツは静かに顔を上げると、その瞳を細めて私を見つめた。
『おまえは何も捨てなくていい。
その分俺ができる限り捨ててやる。
おまえは何も変わる必要はねーし、
俺は変化を求めない。
これからも夏芽の話をいっぱいしよう。
夏芽と俺とおまえとで、一緒に親になっていこう…。』
ナツはわかっていた。
私が夏を置いては未来には進めないと。
夏を愛する事で私が自分らしくいられるという事を。
全部ひっくるめて私を見てくれていた。
私をわかってくれる人がここにいた。
涙で視界が滲んでもうナツが見えなくなった。
『…はい…。
私と結婚してください。』
でも大丈夫。
きっと瞬く間にガッツポーズを決めたナツが見える筈だから。
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