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グラバラスとスタージャ。水と油のようで、表裏一体のような関係の国と組織が激突するのには、最早理由など必要ないだろう。
いや、少なくとも表面的な理由はある。
グラバラスは、世界随一とまで評される軍事力を誇る大国。
故に、相応の報酬を貰えば――――どんな魑魅魍魎をも討伐するスタージャは放っておけない存在だった。
世界の平穏と均衡を崩すスタージャなど、目の上のたんこぶ。当時、グラバラス最強の名を欲しいままにしていた『雷王』の言葉を借りれば、
世界の癌。
そうした表現も、あながち間違いではない。彼等のせいで流れた血を考えれば、そう感じる者は首を縦に振るばかりなのだから。
尤も、そう感じない者も世界にはいるのだが。
それは――世界から見る弱者という存在。
人間の営みの結果、国という組織が生まれるとするならば――そこには必ず勝者と敗者。強者と弱者がいる。
その弱者達が、最後の最期に。大国から後はもう搾られるだけと成り果てた者達が頼るのが、スタージャだった。
相応の報酬。
即ち、領土と自治権を献上する事により、弱者達はスタージャの庇護下に入ると共に、侵略を完全に防げるのだ。
無論、それ相応のリスクは伴う。しかし、弱者達からすれば――このまま黙ってなぶり殺しにされるくらいならば、一矢報いてやりたいという気持ちの方が大きい。
つまり、グラバラスとスタージャの戦いは――強者と弱者の代理戦争とも呼べるだろう。
が、互いの力は今のこの世界の情勢よりも均衡を保っている。
水面下では、多くの血が流れているのは確かだが、表立っての戦争は未だにないのが現状だった。
そんな中――――スタージャが苦肉の策として送り出したのが、
「……俺達だったんだがな」
騒ぎが冷めやらぬランドの中で、スーは何とも難しい顔で呟く。
先刻、自分と謎の少女がぶつかり合った際、ランドの門は空高く吹き飛ばされてしまった。自分には傷一つ付いていないが、まさかこんな騒ぎにまで発展しようとは。
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