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そんな事を考えながらも、スーは未だに騒ぎが収まらない教室をグルリと見渡す。そして、再度――深い深い溜息を吐いた。
「ねぇねぇ、ライトさん。俺、ポワンって言うんだけどさ、一緒にお昼でもどう? ここの学食最高にイケるから」
「いやいや、やっぱりライトさんみたいに綺麗な方は学食なんて似合いませんよ!! ここは、この俺……ゼアルがカフェにでも」
「まぁ待ちな、男子。ここはこのエリーと女同士で親睦を深めようじゃないか。さぁ、穴場の酒場にでも洒落こもうじゃないか」
「黙ってろ、このレズ三留女が。ライトさんは、そんな煙草が充満するような所に用は無いんだよ、どうですか? ここは学年一のイケメンこと……アックスとディナーを……勿論、最高級のレストランを用意しています」
今、喧騒が教室を支配しているのは、門が吹き飛ばされたから――という訳ではない。そもそも、そんな話題は彼等に全く関心を抱かせなかったのだ。
原因は言わずもがな、教室を熱気で満たす渦の中心にいるライト。
自分が遅れて教室で自己紹介をした時には既に、全員が聞いていなかった始末だ。
――……女子くらいは、俺のところに来ても良かったんじゃないかな。
心中で嘆きながらも、スーの視線は微笑みを絶やさないライトの方に。
あんなに声をかけられてから数時間。教室だけでなく、廊下を埋め尽くす程の生徒達の好奇の視線を受けても尚、笑顔を見せるライトに疑問を抱かざるを得ない。
――……アイツ、あんなに我慢強かったのか? もしもスタージャだったら……いや、そもそもライトを知ってる奴は逆に逃げ惑うだけか。
――こんなんじゃ、いきなり騒ぎ起こした俺の立つ瀬がないっての。しっかし、あの女……一体何なんだ?
周囲の馬鹿達に、自分達の正体を気取られている訳では無さそうだ。特に男達など、絶世の美少女を前に鼻の下を伸ばしまくっているではないか。
ならば、やはりあの女子生徒が特別なのだろうか? 何にせよ、今度会った時に拷問がてら聞き出そう。
そんな物騒な事を考えながら、スーは転校初日で空気と化した事にやり易さと寂しさを覚えていたのだが――――
「やっほ、どうした? 転校初日でブルーな顔して。このサンちゃんが一緒にご飯してやろうかい?」
「…………あ?」
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