星蛇

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聞き覚えのある粗暴な口調。それに反し、やたらと可愛らしい声音にスーは眉をひそめる。 ――……オイオイ、嘘だろ? まさかとは思いつつ、声のした方向。即ち、自身の頭上に視線を向けていくスー。 そこには、やはりと言うか――何と言うか。先刻、確かに殺し合いをした筈の少女が仁王立ちしているではないか。 ――コイツ、さっきの戦いで実力差が分かってなかったのか? あの時、自分が圧倒的に不利な立場に追い詰められていたというのなら、話は理解出来る。 その時には、目の前の女を見た瞬間に逃げ出していただろう。 だが、スーは知っていた。あの戦いだけで。あの一秒程度の戦いだけで、目の前の女と自分には比肩する事のない実力差があるのだと。 結界を張る技術だけならば、スーを遥かに凌駕する。とは言っても、所詮はそれまでの事。そもそも彼が本気を出せば、結界など何の意味も成さないのだが。 ――……俺の力が解らないって程、弱い訳じゃないだろ? ――それなのに何なんだ、この女。ただの捨て駒か? 後、結構オッパイでっかいじゃねぇかコイツ。ライトとは比べ 刹那。 スーとサンの間を、何かが通り過ぎる。 教室を盛り上げる馬鹿や廊下で騒ぐ愚者には、その結果すら認識できていない。恐らく、ニヒヒと笑うサンすらも感知していなかった筈だ。 「っぶねぇ…………」 感知出来たのは、冷や汗をどっと流すスーだけだ。一瞬遅れ、ライトのいる方角から放たれた鋏を逃れた事に安堵の息を吐く。 まさに刹那の攻防。 ライトが音速の域で、いや、最早そういう次元では済まされない速度で放った刃物は――スーの脳へと向かっていた。 しかし、寸での所でスーは避けたのである。それも目の前のサンに全く動いたと思わせない、最小限の動きだけで。
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