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――……普通、こんな場所で鋏投げるか? 誰かに当たってたらどうするんだよ。
自分が今朝、門を吹き飛ばしたのを完全に棚に上げ、ライトの方を軽く睨み付けるスー。
だが、とある違和感。
最初、スーはその違和感に気付けずにいた。というよりも、ライトのその表情が何を意味するのか理解できなかった。
全く。全く。全く。
全く。全く。全く。全く。全く。全く。全く。全く。全く。全く。全く。全く。
全く。全く。全く。全く。全く。全く。全く。全く。全く全く全く全く全く全く全く全く全く全く全く全く全く全く全く全く全く全く全く――――理解出来ない。
ライトがそんな表情を浮かべている理由が。あのライトが、目を見開いて自分を見つめている事が。
あの最強が。スタージャ一位が。最強に頭を垂れさせる唯一の存在が。
何故、自分を見つめて――驚愕している? いや、違う、そんな事はどうでもいい。どうして彼女の瞳の奥には――――
恐怖の色が浮かんでいる?
「これは、投げるものじゃない」
その答えに辿り着く前に、スーの背中に静かな言葉が。
静かでいながら、有無を言わさぬ力強い言葉が投げ掛けられる。
スーは振り向けない。コトリ、と置かれた机上の鋏を見つめる事しか出来なかった。
「分かったか?」
「…………」
「分からないのか?」
「誰だ、お前」
口内の水分が、一瞬で干上がってしまった。背中をグッショリと濡らす冷や汗のせいなのか。
そんな事も、考えられない。訳が分からない。果たして自分が今、何て言ったのかにも今のスーには思い出せなかった。
だが、そんな混乱状態に陥りながらも会話の主導権を握ろうとした事は、褒め称えるべきなのかもしれない。
尤も――――背後の気配に、そんなものが通じる訳がないのだが。
「分からないんだな」
「………………ぅぉ」
「本当にそんな事も分からないまま、それでいいんだな?」
――………………いや、そもそも投げたの俺じゃないじゃん!!!!
「え、と」
「それで、良いんだな?」
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