星蛇

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明らかに場違いなほどの明るい声音。スーがギチギチと音を鳴らすようにして首を向けると、満面の笑みを浮かべるサンの顔がそこにあった。 「………………ぁ、あ、あ」 何か口にしようとしても、声にすらならない。自分は先程の数秒だけで、声の出し方すら忘れてしまったのか。 渇いた唇から血が滲むが、それでも何かを伝えようとするスー。しかし、サンはそれを許さない。 胸ポケットから取り出した上品に畳まれたハンカチを、スーの口許に持っていく。その所作を避けることすら出来ないほど、青年の全身は脱力していた。 「あんまり頑張らなくてもいいんだぜ? 君達が弱い訳じゃねーんだからよ、アレだ……本当はお披露目はもうちょっと先伸ばしにするべきだったんだろうけど……」 と、そこで乱暴な言葉遣いをする少女は頬を朱に染める。風貌は美と付いても何ら違和感が無いため、絵にはなったが不自然極まりなかった。 そもそも、こんな人を馬鹿にする喋り方をする女が、照れるなど考えられまい。 「……ちょっとだけ、私の身の安全を心配してくれたみたいでさ。釘を刺しといてくれた訳……くぅぅ……ああいう男がたまに見せるデレはたまらんものがあるな……」 本人は小声のつもりなのだろうが、バッチリと周囲にも行き届いている。ドラグですら、サンを睨み付けていた。 だが、このやり取りに全く関係のないスーは生きた心地がしない。あの視線だけで、もうスタージャなどから逃げて引きこもりたくなる。 「…………声……が、デカイ……」 「え? 聞こえないっての、何だよ……僕ちん、怠そうな雰囲気だしたイケメン君だけど、一々細かい所気にするんだなぁ……そんなんじゃモテないぜ? 時代は無愛想系デレ男子ぃ――――ってぇぇぇ!!」 「いい加減黙れ」 ペラペラと回る舌が、遂に止まった。原因は言わずもがな、サンの脳天に容赦なく叩き付けられたドラグの拳骨。 そんな日常風景に溶け込むような瞬間ですら、スーもライトもドラグの速さを認識出来ない。 引き摺られるようにして席へと戻るサンとドラグ。彼等の後ろ姿を、スタージャの一位と二位は、ただただ見つめる事しか出来ずにいた。 ◆◆◆
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