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だが、スーからすれば、何故自分にこうも――有体に言えば、ビビッているにも関わらず、ドラグを認識していない事が可笑しかった。
普段ならば、常識人の一面をも持ち合わせているが為、脅したりなどしないのだが、
「……お前、何でアイツを目にしても、全然怖がらないのに……何で俺を前にして怖がるんだ? なぁ」
声を荒げながら、小柄な男子生徒に詰め寄るスー。小動物さながらに、身体を精一杯縮める生徒は、訳が分からないとばかりに呟くだけだ。
「え、え? ぼ、僕、何かしましたか?」
「だ、か、ら、お前は……いや、お前等は何でドラグを怖がらないんだよ……って、聞いてんだ!!」
「…………うん?」
スーの怒号は、男子寮の廊下を震わせるに充分だった。幸いにも、ドラグは自室へと既に足を運んでいたが――偶然にも辺りを歩いていた生徒は、二人へと視線を向ける。
スーは気付かない。
彼らの視線の色に、どこか懐かしむような色が含められているという事に。
そして、今まで気弱な風でしかなかった生徒も、訝しげにスーを見つめ返していた。その瞳は、ある種の確信を持っていて。
「……え、君、転校生?」
「あ、ああ。ライトって奴と一緒に……今日からランドから来たんだよ」
「じゃあ、ソボラン星人が来た事件は知らない……の?」
「…………テメェ、何ふざけてんだ?」
聞き慣れない言葉と、星人などという荒唐無稽な単語が出てきた事に、スーは呆れよりも苛立ちを募らせる。
胸ぐらを掴んで、壁にでも叩き付ければふざけた言葉も出なくなるだろうか?
そう思いながら、スーは手を伸ばしかけたのだが、
「おいおい、止めといてやれよ」
不意に背後から投げかけられた言葉。
大して驚きもせずに振り返れば、そこには十数人の生徒達が取り囲んでいるではないか。
喧嘩か何かだと思って止めに来たのか? ならば、スーからしてもありがたい話だ。
無駄な暴力を振るう必要もなくなるし、この状況の中で自分を止める人間ならば、ふざけた言葉も吐かないだろう。
しかし、スーの期待を裏切り――彼らの吐いた言葉は、
「ソイツの言ってる事は本当なんだからよ」
「転校生君が、何も知らずに苛めるな」
「あの大神災の事だって知らないんだろ?」
「アレは嫌な事件だったな……相手が」
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