星蛇

13/21

792人が本棚に入れています
本棚に追加
/29ページ
三十二の銀河を統べるソボラン星人瞬殺事件。 突如としてランドの中庭に現れた円盤は、おおよそこの世界では造ることが実現不可能な巨大さを誇っていた――らしい。 ランドは広大な敷地を誇るが、その一帯から完全に日光を遮った円盤。生徒達や教職員は、最初目を丸くしていたのだが――次いで円盤から響いた声音が伝えたのは、 曰く、自分達は最強の一族である。曰く、三十三個目の銀河を支配する一歩目をここに決めた。曰く、お前達は今日から奴隷であり、抵抗するようならば手始めに全員殺す。 長ったらしい言葉をペラペラと話していたが、要約すればこれだ。 他にも時間と空間を操る者が一万人はいる、だとか――銀河一つ消せる怪物がいる、だとか、一番の実力者は最早神として伝説を残している――だとか。 そして、巨大な円盤から続々と、物々しい衣服を身に包んだ異形のものが降りてきたのだが――彼らの足は、そのどれもが地には付かなかったらしい。 唯一神降臨からの逃亡事件。 信じ難い話ではあるが、この世界でも――いや、スーが呼び出す本物の神や、神と呼んでも差し支えない神話の怪物、天使をも畏怖させる怪物――唯一神。 スーも一度は呼び出した事はあるが、その迫力と最強と名高い力を前にして契約を断念した事もある神。どうやら、その神が―― とある人間の青年の存在を危惧し、この世界へと姿を現した――らしい。そして、百枚あった神々しい羽はふかふかの羽毛布団になった――らしい。 後、滅茶苦茶泣いていた――らしい。 「ふっざけんなああああああああああああああああああああ!!!!!!」 学生寮とは思えない広さを誇る室内で、喉が枯れるほど叫ぶスー。 だが、防音設備も完璧なおかげで外に音が漏れることは無い。 尤も、設備があろうとなかろうと、スーは叫んでいたのだろうが。彼の瞳からは、小さく涙すら零れ落ちていた。 「頭がおかしい……というか、馬鹿だ」 フカフカと枕に顔を埋めてみるが、何も変わりはしない。そして、この枕も、自分が命を賭けなければ倒せないとまで感じた唯一神の羽が使われているらしい。 「…………え、てか、どうするの? 詰みじゃん? 俺達帰って何を報告すればいいの?」
/29ページ

最初のコメントを投稿しよう!

792人が本棚に入れています
本棚に追加