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拗ねた子供のように呟き続けるスーではあるが、何も独り言という訳ではない。
青年はベッドの上で、シャツに皺が出来るのにも気にせず、もう一人の存在に問いかける。
「どうすんの、マジで」
東洋の計算で言えば、十畳はあろうかというフローリングの床に座り込む少女――ライト。
何を隠そう、ソボラン星人や唯一神の情報を集めたのは、このライトである。彼女にそこまでの社交性があったのは、正直驚嘆すべき事実ではあるが――――
そんな驚愕を、超越するものがあったのだ。俯いたまま何も口にしないライトに、スーは今日何度目かも分からない溜息を吐く。
「……スタージャにも報告の仕様が無いってか。確かにあんな化物がいるんじゃ、戦争仕掛けても無駄何だろうがよ……」
それでも、勝機が無い訳ではない。スーの思考回路は、既にここの異常性を看破していた。
そもそも、あんな化物がいるのなら――グラバラスがいると認識しているのなら、こんな冷戦などとっくに終結している。
更に、自分達など死んでいても可笑しくはない。だが、実際にはそうなっていないのが現実である。
ならば、ドラグ・フォーリスという怪物は――戦争になど、全く興味を示していないと考えるのが妥当だろう。
ランド側が、お上に情報を流していない可能性も否定出来ない。
――……路線変更だろうな。
――ドラグ・フォーリスをどうこうするんじゃなくて、取り巻く環境の調査が先か。どれも今は憶測にしか過ぎねぇ。
――もしも鎖に繋がれるような奴なら、俺達が上手に手綱を握ってやればいいんだが……。
と、スーが冷静に現状を分析する最中。沈黙を保ったままのライトはと言えば――――赤面していた。
その赤さたるや、高熱を出した子どもをも凌駕する赤さである。
なまじ健康的という点を最大限に保った白い肌の為、違いがクッキリと分かってしまう。
――……今まで私の周りは雑魚ばっかりだった。
――みんな虫にしか見えなかったのに……何で? 何であんな男がいるの?
――…………ち、違うよ。全然何も思ってない、思ってないよ。知らないもん、知らない知らない…………
「あー、取り敢えず今後の方針は俺の中じゃ決まってきたからよ、ライト、お前はどうだ?」
「知らないもん」
「……あ? もん? ハ?」
「え?」
「もん? って……ハ?」
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