最強

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まだ十七歳になるかならないか――そんな少女が、ここまで無邪気な笑顔を見せる事が。ここまで無邪気なまま、壊れてしまっている事に。 生まれながらにして最強。 きっとこの言葉は、力無き者には魅力的に聞こえる事だろう。自分の思うがままに世界を回せると錯覚するのかもしれない。 ならば――ライトはどうなのだろうか? 最強というのは、本当に幸福なのだろうか?  周りで生きている人間が虫けら程度に感じる事は。戦闘になれば一瞬で決着が付く事は。他人の命が、ゴミ同然に感じてしまうことは―― 果たして本当に幸せと言えるのだろうか? そんな不幸な最強の笑顔を前に、スーは軽く目を伏せた。 「スー?」 「……なんでもねぇよ、ちょっと野暮用だ。先行けよ」 「ハァ? これ任務でもあるんだけど。スーはさ、何時から私に指図出来るほど強くて偉くなったの?」 「あー、うっせえなお前は……便所だよ、便所!! 学校に入って最初に入る所が便所とか味気ないだろうが」 「ふぅん、じゃあ私は先に行くから」 さして気にもしていなかったのか、ライトはそれ以上追及することはせずに門を軽々と開け放つ。背丈を楽に超えるほど重厚な門だったが、いとも容易く。 そのまま遠ざかる背中を見つめ、完全に消え去るのを待つスー。ようやくその姿が消え去ってから、少年はポケットから半分折れたような煙草を口に運んだ。 「……ったく。あんまり人にモヤモヤさせんなよな……」 指先を軽く鳴らし、火が付いた煙草を吸い込む。 喫煙者としては至福の一時なのであろうが、彼が今は未成年だということを忘れてはならない。 一応とばかりに、近くの茂みに入り込んだのは――彼が常識人だという証拠だろうか? 胸のモヤを取り払うべく、スーはその紫煙を曇らせる。 ――さて、と……とりあえず結界でも張っておくか。教師に見つかる程度ならいいんだが、ライトに見つかったら殺されるからな。 ――いざとなれば、記憶でも消してやればいいんだがな。流石に殺すまではヤベェし……今は。 編入初日に事をやらかすのは不味い。 あのライトですら、流石に初日になにかをやらかしはしまい。そこで自分がヘマをしてしまえば、待っているのは地獄。
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