最強

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だからこそ、スーは結界を張り巡らせる。 簡易的ではあるが、周囲の人間には決して悟られないような結界を。 破壊できないのではなく――何となく、この場に行きたくないと予感させる結界。例えば、小さな子どもが病院に行きたくない――そんな感情を増幅させる結界だ。 故に、どれだけの強者が現れようともここに来ることは無いだろう。そんな風に、高を括っていたスーであったが、 「あれぇー? ちょっとちょっとどういう事なのかなマジで。私の喫煙スポットに結界張ってんの誰よ」 突如として真上から響いた声音に、ギョッと背を固まらせる。もしも教師ならば、自分は即座に動かなければならない。 だが――覚悟を決めたスーの視界に入ったのは、教師ではなく自分と同じくらいの年齢であろう女だった。淡い緑髪は肩の位置で切り揃えられており、何とも真面目な印象を受ける顔立ち。 しかし、言葉遣いと風貌は全く一致しない所が妙なギャップを演出させていた。警戒を続けるスーを前に、少女はカラカラと笑う。 「おうおう、おっかない顔するなよ僕ちんよぉ。私も煙草吸いに来たんだよ……てか、何? 僕ちん編入生か何か?」 「……何勝手に横座ってんだよ」 「うわ、真面目君かよ!! どんなギャップだっつーの、煙草ふかした少年君は実は生真面目純情男子ってか? ヘッヘッヘ、面白いなお前」 ――何だ、この女? 肩をバシバシと叩かれ、スーは目を丸くしていた。 いきなり現れたこの女が妙に馴れ馴れしい所もそうだが――こんな一生徒でしかないような女が、自分の結界を破って見せた事に。 確かに自分の張った結界に強度は無い。 それでも、いくらなんでも――自分が張った結界を破られたという自覚すら受けなかったのは、何たる事か。 ――おいおい、グラバラスってのは……ランドってのは、どんな怪物集団だ? ――それとも、何だ? この女が特別な存在だって言うのか? ……いや、それはない。 スーがそう判断したのには、一つの明確な根拠がある。 この女には、特別な存在であるという空気――強者が纏うある種の傲慢さが全く見られないのだ。 少女自身が、まるで自分は世界にとって道端に転がる小石でしかない――そんな自虐的な空気すらある。
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