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そんなこんなで19時。
居酒屋。
「んで?
テメーは何飲むんだよ。
またオレンジジュースか?」
「あ……、じゃあソレで」
あたしは、
真っ黒に染められた木の壁を背もたれにしてお品書きを睨む海斗君を、
チラリと一目見てからテーブルに視線を落とした。
ここに到着するなり案内されたのが、
この個室だ。
どこからか複数の話し声がくもって聞こえてくる。
天井の辺りからはしっとりとした琴の音色が静かに、
それでいて鮮明に響いていて、
落ち着いた和の雰囲気に、
あたしはどことなく畏まらなければいけない空気のようなものを感じていた。
けれど、
海斗君はその空気をいとも簡単に乱暴な言葉で割いた。
「アイツら来んのどーせ遅ぇだろ。
先に何か食うか」
せっかく上品な気分を味わっていたのに、
それが台無しだ。
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