几帳面vsマイペース

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こっそりわさびを仕込んでいた海斗君とは違い、 あたしは海斗君の目の前でそれを仕込んだ訳で、 それなのに海斗君がこれを食べなかったらどうしようとか、 そういう事は全く考えなかった。 「はい、食べて」 「アホか。 テメーが食った量の何倍あ……」 「食べて」 知らない人が今のこの状況だけを見たら、 あたしが食べさせてあげる。はい、あーん。 な感じに見えるんだろうけど。 これは、あたしと海斗君の戦いだ。 負けてたまるか! 「早く食べて下さい」 ずいっとお刺身を突き出すと、 海斗君は鼻先のそれを 微妙な顔つきで見つめた。 そして、 パクリ、と――。 あ、食べた。 うだうだ言ってた割には、 余りにも潔よくて面白くない。 と、思ったのも一瞬の事。 「くっ、きたーっ!」 鼻の頭を押さえて、 ぎゅうっと目を瞑る海斗君。 そして直ぐにビールジョッキを掴んで、 それを一気飲み。 「あははは! やったー!」 何コレ。 すんごい面白い。
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