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あたしは、
ごぼう揚げのはしっこを
小さく開いた口に挟んだ。
そこで海斗君の箸が離れたから、
ごぼう揚げを指で掴んで噛みちぎる。
うん。
この繊維質に、この土っぽい匂い。
間違いなく、ごぼ……。
「何これっ! かっらーー……」
「はぁ? マジで何もやってねぇだろ。
つーか辛いか?」
「辛い……」
またまたオレンジジュースで口の中に残った味を誤魔化していると、
海斗君はお品書きを開いた。
「あー。ピリ辛って書いてたわ」
さらっとそう言い、
そのピリ辛ごぼうとやらを
口に入れる海斗君。
そして、
「ピリッともしねーんだけど」
と、首を傾げている。
味覚おかしいんじゃないの?
あたしは未だに指で掴んだままの、
あと残り半分に目を向けた。
この食べかけのピリ辛ごぼうをどうしようか。
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